モバイルデバイスソリューションのゼロタッチ
モバイルデバイスを管理するためにMDM(Mobile Device Management)やEMM(Enterprise Mobility Management)は不可欠なツールとなっています。
一方、この不可欠なツールを導入するためにキッティングなどの工数が高くなっている側面があります。
そこで、キッティング工数を削減し、かつセキュリティを高めるためにゼロタッチと呼ばれるアプローチが注目されています。本レポートではモバイルデバイスソリューションにおけるゼロタッチの重要性、利点についてお伝えします。
1. ゼロタッチの概要
1.1 ゼロタッチとは何か?
ゼロタッチ(Zero Touch)は、モバイルデバイス管理において、デバイスの設定や管理を最小限のユーザー介入で行うアプローチです。このコンセプトは、効率的なデバイス展開、セキュリティの強化、リソースの節約を可能にし、組織にとって大きな価値を提供します。
1.2 ゼロタッチの重要性
1.2.1 デバイスの効率的な展開
従業員が新しいモバイルデバイスを受け取った際、それを生産的に使用できる状態にするまでの時間と手間を最小限に抑えることが重要です。ゼロタッチは、新しいデバイスのセットアップを自動化し、展開プロセスを劇的に迅速化します。
1.2.2 セキュリティの向上
例えば、ABM(Apple Business Manager)に登録されたADE(Automated Device Enrollment)デバイスであれば、デバイス操作でMDMプロファイルを削除することを禁止することができます。また、ユーザーが初期化してしまった場合でも自動的にMDMプロファイルがインストールされるため、デバイスを常にMDM管理下に置くことができます。
1.2.3 コスト削減
手動でのデバイス設定や管理にかかるコストは膨大です。ゼロタッチは自動化されたプロビジョニングとリモート管理を通じて、キッティングのコストを削減します。
キッティングのコストとは、単に作業工数だけではなく納品スケジュールや問い合わせ対応の工数も含めて考える必要があります。
1.3 ゼロタッチの利点
1.3.1 自動プロビジョニング
Appleデバイス、Androidデバイス共に新しいデバイスがネットワークに接続された際、必要な設定が自動的に適用され、デバイスを稼働可能な状態にします。
1.3.2 ADE(Automated Device Enrollment)
MDMソリューションを最大限活用するためにAppleデバイスを監視対象モードにする必要があります。
これまではMac(Apple Configurator)と有線接続し、1台1台設定する必要がありましたが、ゼロタッチを導入することで遠隔でプロファイルインストールが可能となりました。
1.3.3 ZTP(Zero-Touch Provisioning)
Googleが提供しているエンタープライズ向けAndroidデバイスの展開と管理を簡素化するためのツールです。ZTPはAndroidエコシステムに組み込まれており、AndroidデバイスメーカーやMDM/EMMプロバイダーと連携して、エンタープライズ向けのゼロタッチプロビジョニングを実現します。
1.3.4 KME(Knox Mobile Enrollment)
Samsungのモバイルデバイス管理プラットフォームであり、エンタープライズ向けに設計されています。KMEは、SamsungのAndroidデバイス(Galaxy)を、セキュアで簡単な方法でMDM/EMMプラットフォームに登録およびプロビジョニングするためのツールです。
2. ゼロタッチの実装
繰り返しとなりますが、ゼロタッチを実現するためには、MDM/EMMプラットフォームが必要です。
MDM/EMMプラットフォームは、デバイスのプロビジョニング、設定管理、セキュリティポリシーの適用など、ゼロタッチの核となる機能を提供します。
ゼロタッチの導入にはいくつかの課題と注意点があります。これらを適切に管理することが成功の鍵となります。
2.1 デバイス互換性
主にAndroidデバイスになりますが、全てのスマートフォンがゼロタッチに対応しているわけではありません。OSのバージョンやデバイスの互換性を確認し、適切なプロビジョニングプロファイルを用意する必要があります。
また、Appleデバイス、Androidデバイス共に利用中のデバイスに対してゼロタッチ導入をする場合、初期化をする必要がある点にも注意しなければなりません。
2.2 ユーザー操作
ゼロタッチを導入した場合でも開封して業務用デバイスとして利用するまでには、いくつかのステップが必要です。初期セットアップ時の入力パラメータや権限設定など、社給スマートフォンとして利用開始できるまでのマニュアル(手順書)を準備しておく必要があります。
まとめ
ゼロタッチはモバイルデバイス管理において重要な役割を果たすアプローチであり、効率的なデバイス展開、セキュリティの向上、コスト削減など多くの利点を提供します。しかし、適切なプラットフォームの選定、デバイス互換性の確保、データプライバシーと法規制への遵守など、注意点を適切に管理することが成功の鍵です。組織はゼロタッチを活用して、モバイルデバイスをより効果的に管理し、ビジネスプロセスを向上させる準備を進めるべきです。